各種手当の「不合理な待遇差」どこまで許される?― 扶養手当・住居手当をめぐる(日本郵便事件) 【判例シリーズ #04】

“同一労働同一賃金”が本格的に導入されて久しいですが、今でも 「住居手当や扶養手当は正社員だけに払っていいの?」という相談は非常に多いです。

今回は、扶養手当・住居手当の支給格差が争点となった日本郵便事件(東京高裁 → 最高裁令和3年7月16日)を題材に、不合理な待遇差の判断ポイントを整理します。


どんな事件だった?(概要)

日本郵便の契約社員(有期)に対し、次の手当が支給されていませんでした。

  • 扶養手当:正社員のみ
  • 住居手当:正社員のみ
  • 年末年始勤務手当・夏季冬季手当:格差あり

契約社員側は

「正社員と同じ業務なのに、手当の差が大きすぎて不合理」と主張し、裁判となりました。


争点

争われたのはまさにここ👇

各手当(扶養・住居・特殊勤務手当など)の「支給趣旨」と「非正規との待遇差」の合理性


裁判所の判断(結論)

結論から言うと、

手当ごとに“支給目的(趣旨)”が合理的に説明できるかが全て。

最高裁は次のように分類しました👇


手当ごとの判断(日本郵便事件のポイント)

【❌ 不合理とされた(契約社員にも支給すべき)】

① 扶養手当
  • “生活保障”が趣旨
  • 正規・非正規の別で区別する合理的理由がない → 不合理な待遇差(支給すべき)

※ 長澤運輸事件では扶養手当は「合理的」とされたが、今回は“支給趣旨の説明”が弱く、不合理と判断された点が重要。

② 年末年始勤務手当(特殊勤務)
  • 業務の負担は正規・非正規で変わらない → 不合理と判断

【⭕ 不合理ではないとされた(正社員限定OK)】

③ 住居手当
  • 企業側が「安定的な人材確保と長期雇用を前提にした制度」と説明 → 正社員限定でも不合理ではない
④ 夏季・冬季手当(季節手当)
  • 正社員は長期雇用を前提に賃金体系が構築されている → 一定の差は許容される

実務で押さえるべき“超重要ポイント”

① 手当の“趣旨”を明文化する

制度の目的・対象・算定方法

ここが説明できないと「不合理」認定リスクが跳ね上がる。

② 正規と非正規の待遇差は“要件”で説明できるようにする

  • 長期雇用前提
  • 配置転換の範囲
  • 責任の大きさ

この違いが“制度趣旨に関連しているか”がポイント。

③ 特殊勤務(深夜・年末年始)は差が認められにくい

→ 「誰がやっても負担が同じ」=差をつけにくい。

④ 賞与・退職金・手当は“理由”が曖昧なほど危険

→ 同一労働同一賃金のトラブルはここから起きる。


チェックリスト(自社点検)

  • 各手当の“支給目的”を明文化している
  • 非正規との待遇差を制度趣旨で説明できる
  • 住居手当・家族手当など、正社員限定の理由を整理している
  • 特殊勤務手当(夜勤・年末年始など)は差をつけていない
  • 賃金規程・就業規則に記載がある(≠説明できる)

社労士からの実務アドバイス

同一労働同一賃金は“差をなくす”法律ではなく、“理由のない差をなくす”法律。
差がある=違法 ではなく、差が説明できない=不合理 という構造を忘れないこと。

特に手当関係は、制度趣旨が曖昧になっている企業が多いので、規程の棚卸しをするだけでもトラブル予防効果はかなり高い。


まとめ

  • 扶養手当は不合理 → 正社員限定は危険
  • 住居手当は趣旨次第でOK
  • 特殊勤務手当は差がつけられない
  • “支給目的の明確化”が最重要
  • 説明責任を果たせない制度は見直すべき

参考(関連判例)


関連リンク


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