知らなきゃ危険?賃金の「全額払い」とは|制服代や社宅費の天引きはNG?

意外と誤解されがちな「全額払い」って?

「お給料から制服代を引いておきました」

「社員寮の家賃、勝手に差し引いてます」――

このような“ついでの天引き”、実は労働基準法違反になる可能性があります。

今回は、賃金支払いの5原則のひとつ「全額払いの原則」についてわかりやすく解説します!

全額払いの原則とは?(労働基準法第24条)

労働基準法第24条第1項では、次のように定められています。

「賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない」

つまり、会社は本来、給料から何かを勝手に引いてはいけないというルールです。

「全額」とは、労働者が働いた分として受け取るべき賃金の全てを指します。

法定控除とは?(同意なしでも引けるもの)

ただし例外もあります。

次のようなものは「法定控除」と呼ばれ、労働者の同意なしに差し引けます

  • 所得税
  • 住民税
  • 社会保険料(健康保険・厚生年金・雇用保険など)

これらは法律に基づいて引くことが義務づけられているため、問題ありません。

制服代や社宅費を引くには?必要な手続き

法定外控除は、必ず労使協定(賃金控除に関する協定)を締結する必要があります。

たとえば…

  • 制服代
  • 社宅・寮の家賃
  • 社内販売の代金 など

これらを給与から引くには、事前に労使協定を締結している必要があります。

※ただし、この協定は労基署に提出する必要はありません。

「個々に了解を得ていること」や「労働条件通知書に記載していること」を理由に法定外控除を行っているケースが散見されますが、

法定外控除を行うための手続としてはいずれの場合も不適となり、違法な賃金控除と扱われます。

実務での注意点とトラブル事例

🔴 トラブル例

ある会社では、労使協定のないまま寮費を控除していたところ、労働基準監督署から是正勧告。

過去2年分の寮費を未払い賃金として遡って支払うことに…。

📌 注意ポイント

  • 控除目的と金額を明確にする
  • 同意は「口頭」ではなく「書面」で残す
  • 労使協定は定期的な見直しを

まとめ|「ついでの天引き」は危険信号!

「どうせ皆納得してるし」「わざわざ書面なんて面倒だし」

そんな軽い気持ちが、後に大きなトラブルにつながります。

控除は、会社の信用にもかかわる大切なポイント。正しく手続きを踏めば、リスクは未然に防げます。


📌 リンク

出雲労働基準監督署:シリーズ『労務管理のNG4選』②

福井労働局:参考資料「賃金控除に関する協定書(記載例)」

外国人の方を雇用する際に見かける「資格外活動許可」について投稿しています。こちらからご覧ください。


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