週40時間・月60時間の残業ライン、割増賃金はこう変わった
はじめに
「ウチは中小企業だし、残業代は普通に出してるから大丈夫でしょ?」
実はその“普通”の感覚、2023年の法改正でズレているかもしれません。
残業代には「週40時間を超える場合」と「月60時間を超える場合」で、適用されるルールが違うのをご存知でしょうか?
今回は、意外と知られていない「2つのライン」について、社労士の視点でわかりやすくお伝えします。
週40時間を超えたら25%増し(基本ルール)
まず押さえておきたいのが、法定労働時間=1日8時間・週40時間というルール。
このラインを超えて労働させた場合には、25%以上の割増賃金が必要になります。
例えば、1週間で45時間働いた場合、超えた5時間分(=45−40)は「法定外残業」として25%増の支払いが必要です。
このルールは、大企業・中小企業を問わず全企業に共通です。
月60時間を超えたら50%増し(2023年4月から中小企業も対象)
次に押さえるべきは、月60時間を超える時間外労働には50%の割増率が適用されるという点です。
以前はこのルール、大企業だけが対象でしたが、2023年4月から中小企業にも適用されるようになりました。
つまり、中小企業でも、1カ月の時間外労働が60時間を超えた部分には、25%ではなく50%の割増賃金を支払わなければいけません。
※法定休日労働(例:日曜勤務など)や深夜残業は別カウントです。
中小企業こそ要注意!違反リスクと対応のポイント
この月60時間ルール、案外見落とされがちです。
「就業規則には載せているけど、給与計算では対応していなかった…」というケースも見られます。
以下の点に注意しましょう:
- 就業規則や賃金規程に50%増しの規定があるか確認
- 給与計算ソフトの設定が60時間超部分を判別できるか確認
- そもそも60時間を超える残業が発生していないかモニタリング
違反すると、未払い賃金としての請求リスクに加え、行政指導や企業の信用低下にもつながります。
おわりに(社労士としてのひとこと)
法改正は待ってくれません。
企業規模に関係なく、割増賃金ルールの見直しは待ったなしです。
花田勝社会保険労務士事務所では、残業時間の適正管理や割増賃金の制度設計支援も行っております。
「うちの運用、大丈夫かな?」と感じた方は、お気軽にご相談ください。
1. 東京労働局の公開資料
東京労働局が公開している割増賃金に関する資料
👉 「しっかりマスター労働基準法 割増賃金編」をご参照ください。
2. 厚生労働省からのお知らせ
厚生労働省が公開している中小企業向けの案内
👉 「2023年4月1日から月60時間を超える時間外労働の割増賃金率が引き上げられます」をご覧ください。
「休日の取り扱い」については、振替休日や代休の違いも整理しておきたいところです。
👉 振替休日と代休の違いをわかりやすく解説した記事はこちら
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