【安全配慮義務とは?】会社が従業員の健康を守るために必要なこと【労契法5条/安衛法3条】

安全配慮義務ってなに?

「労働契約を結んだら、あとは働いてもらうだけ」──

そんな時代は終わりました。

会社には、従業員が安全に・健康に働けるように配慮する責任があります。

この責任のことを「安全配慮義務」といいます。

近年では、過労やメンタルヘルスの問題も多くなり、

中小企業の現場でも決して他人事ではなくなっています。

法的根拠は「労契法第5条」と「安衛法第3条」

🔹労働契約法 第5条(労働者の安全への配慮)

使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命・身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。

🔹労働安全衛生法 第3条(事業者等の責務)

事業者は、単にこの法律で定める労働災害の防止のための最低基準を守るだけでなく、快適な職場環境の実現と労働条件の改善を通じて職場における労働者の安全と健康を確保するようにしなければならない。また、事業者は、国が実施する労働災害の防止に関する施策に協力するようにしなければならない。

この2つは似ているようで役割が異なります。

法律内容義務の強さ
労契法第5条労働契約上の義務罰則ないが、損害賠償請求される可能性あり
安衛法第3条職場環境づくりの努力義務努力義務を怠り、他の条項に違反→罰則の可能性あり

つまり、安全配慮義務を怠ると法的責任を問われる可能性があるということです。

どんなときに問題になるの?

以下のようなケースでは、安全配慮義務違反が問われることがあります。

  • 月100時間を超える長時間労働で心身に異常をきたした
  • 上司によるパワーハラスメントを放置
  • 体調不良の申告を無視して出勤を強要
  • 精神疾患の治療中にもかかわらず、過重な業務を命じた

これらの対応が不適切だった場合、損害賠償請求につながる可能性もあります。

有名な裁判例:電通事件

1991年、広告会社・電通で新入社員が長時間労働の末に自ら命を絶った事件では、企業に対し「安全配慮義務違反」が認められました。

この事件をきっかけに、「残業が合法的でも、労働者の健康が損なわれれば企業に責任がある」という考え方が広まりました。

つまり、「36協定があるから大丈夫」とは言いきれないのです。

中小企業が気をつけたいポイント

中小企業では人手が限られているため、次のような観点が特に重要です。

  • 労働時間の把握と管理  → タイムカード・システム導入が困難でも、定期的なヒアリングで実態把握を。
  • メンタル不調への対応  → ストレスチェックの実施は義務でなくても、体調に気を配る文化づくりが大切。
    ※ストレスチェックの義務対象者が拡大される見込みです。令和7年3月に従業員数50人未満の事業者も義務化する改正案が閣議決定、国会で改正法が成立すれば、公布から3年以内に施行されます。
  • ハラスメント対策  → 相談窓口は社内に設置できなくても、社労士など外部相談先の確保を。
  • 外部リソースの活用  → 産業医がいない場合でも、外部専門家や社労士と連携すれば対応可能。

まとめ:小さな会社こそ“顔の見える配慮”を強みに

大企業のように制度や専門部門がなくても、「声をかける」「気にかける」という日々の配慮が、従業員の安全と信頼を守るカギになります。

中小企業だからこそできる、“人”に寄り添った対応。その土台づくりを、社労士がサポートします。お気軽にご相談ください。


📌 リンク

e-Gov検索:労働契約法

e-Gov検索:労働安全衛生法

厚生労働省:労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン

『健康診断』の義務とポイント|安衛法に基づく対応をわかりやすく解説


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