判例で学ぶ「雇止めの法理」―東芝柳町工場事件を起点に“更新運用”を見直す【判例シリーズ#01】

有期契約は「期限が来たら終わり」…とは限りません。反復更新などの事情から継続雇用への“合理的期待”が認められると、雇止めには“解雇に準じた客観的合理性・社会的相当性”が求められる―これが、東芝柳町工場事件などで確立した雇止めの法理です。

本稿では、結論→事案→判断→実務ポイント→チェックリスト→条項例の順で、明日から運用を見直せる形に落とし込みます。


結論サマリ

  • 反復更新や運用実態により、労働者に継続雇用の合理的期待が生じ得る。
  • その場合の雇止めには、解雇に準じた厳格さ(客観的合理性・社会的相当性)が必要。
  • 更新基準の明示/満了前の手続/記録の一元化でトラブルを予防する。

事案の概要

  • 有期契約(例:3か月更新)を複数回更新し、長期勤務に至ったケース。
  • 会社が次回更新をしない(雇止め)と告げたが、更新基準や理由が不明確で紛争化。
  • 裁判所は更新の運用実態労働者側の期待形成を総合評価して結論を導く。

争点の整理

  1. 労働者に継続雇用の合理的期待があったか。
  2. 会社の雇止めに客観的合理性・社会的相当性があるか(業務量・能力・勤怠・経営等)。
  3. 更新基準の明示手続の相当性が確保されていたか。

裁判所の判断

  • 反復更新の有無・回数・通算期間、更新時の説明や評価の運用、就業実態等を総合的に判断
  • 期待が認められる場合、雇止めは解雇に準じた厳格な要件を満たすことが求められる。
  • 一方、当初から更新基準が明確で、期待が弱い運用であれば、雇止めが有効とされる余地もある。

実務ポイント

  1. 更新基準の“書面明示” 能力・勤怠・業績・配置・評価のプロセス等を採用時に書面で示す(労基法15条の明示とも整合)。
  2. 満了前の“手続”を固定 満了日の概ね30日前を目安に、面談→評価→意思確認→文書交付の流れを定着(社内基準化)。
  3. “更新前提”の言動回避 「次もよろしく」等の口頭表現や、実態として常に更新される慣行を見直す。
  4. 記録の一元化 面談記録・評価票・勤怠・注意指導・可否理由を台帳で一元管理(紛争時の決定打)。
  5. 更新しない時の配慮 配置転換・教育・改善猶予の検討→理由の文書化で手続の相当性を確保。

※ 満了前予告の「30日前」は法定一律義務ではなく、社内運用の目安としての推奨です(関連する告示・指針の趣旨に沿う運用)。


チェックリスト(保存版)

  • 採用時に有期契約の趣旨&更新基準を明示した
  • 満了30日前アラートが自動で出る仕組みがある(台帳・カレンダー)
  • 面談記録・評価・更新可否の理由を紐づけ保管している
  • 更新を前提化する表現を社内で控えるよう指導済み
  • 雇止め時の配慮措置の検討記録が残っている

契約書・就業規則に入れる条項例

自社実態に合わせて調整してください(雇用契約書・有期契約運用規程)。

(契約期間・更新)

本契約は○年○月○日から○年○月○日までの有期労働契約とし、更新の有無は、業務量、勤務成績、能⼒、健康状態、勤怠状況、会社の経営状況その他合理的理由に基づき判断する。更新の有無は契約期間満了前に通知する。

(更新手続)

会社は、契約満了の概ね30日前までに本人と面談を行い、更新可否およびその理由、次期間の労働条件を説明のうえ、文書で通知する。

(雇止めの手続)

更新を行わない場合、会社はその理由を本人へ説明し、必要に応じて配置転換・教育訓練その他の配慮措置を検討する。


関連リンク


参考条文

参考判例:東芝柳町工場事件日立メディコ事件 ほか(雇止め法理の形成に関する代表例)


免責

本記事は一般的な情報提供です。個別案件は事情により結論が変わります。具体的な判断は個別にご相談ください。


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