採用広報で使う写真・画像の著作権・肖像権の実務Q&A
採用サイト、求人LP、SNS、パンフ——写真や画像は“信頼”を左右します。
一方で、著作権(だれの作品か)と肖像権(だれの顔か)の配慮を欠くと、炎上・信用失墜・法的リスクに直結。
本記事は、現場で迷いがちな疑問をQ&Aでスッキリ解決し、すぐ運用に落とせるチェックリストと条項例まで載せた実務版ガイドです。
Q&A(よくある10問)
Q1. 社内で撮った社員スナップを採用サイトに載せていい?
A. 原則「本人の同意」が必要。
- 肖像権:本人が写っていれば同意を取る(顔が特定できる場合は必須)。
- 写り込み注意:ホワイトボード、PC画面、掲示物、社外の人物・お客様の顔はモザイク等で配慮。
- 同意の範囲:媒体(自社HP・SNS・求人媒体・紙)、期間、二次利用、広告出稿(SNS広告等)を明記。退職後の扱いも定めておくと安心。
Q2. 退職者の写真をそのまま使い続けて良い?
A. 同意書の取り決め次第。
- 退職後の掲載可否・差替え期限・掲載停止の申出方法を同意書に明記。
- 退職時フローに「掲載継続の希望確認→必要なら差替え」を組み込むのが安全。
Q3. 社員が撮った社内写真の著作権は会社?社員?
A. 撮影者が著作権者が原則。
- 例外として「業務として作成し、会社名義で公表するなど一定要件で“法人著作”」となる場合あり。
- 実務は著作権(または利用許諾)の帰属を社内規程・誓約書・個別同意で明確化しておく。
Q4. ストックフォトは“安全”?
A. 使い方次第。
- ライセンス確認(商用可/再配布不可/加工可否/クレジット表記)。
- モデルリリース・プロパティリリース(人物・施設の権利処理)に注意。
- 利用禁止例(誤解を与える医療・金融・宗教・成人向け等)をサイト規約で確認。
- “無料サイト”でも商用NG・帰属表示必須など条件差あり。
Q5. Canvaやテンプレ素材は?
A. 各素材のライセンスを要確認。
- テンプレを使った成果物は商用OKでも、素材の単独再配布NGが一般的。
- フォント・アイコン・イラスト等の第三者素材の帰属や再配布不可に留意。
- 社内で「Canva利用ルール」を定め、素材出典の記録を残す。
Q6. 社員のSNSにある写真を会社で再利用できる?
A. そのままはNG。
- 著作権は撮影者に残るため、社内利用の許諾取りが必要。
- SNSの“シェア/埋め込み”はプラットフォーム規約の範囲なら可。ただしダウンロード転載は別契約と考える。
Q7. GoogleマップやSNSのスクショを載せていい?
A. 原則は「埋め込み推奨」。
- 地図スクショは帰属表示や利用条件が厳格。公式の埋め込みコードを基本に。
- SNSスクショは権利者・利用規約に配慮。埋め込みか許諾を選択。
Q8. 取引先・学校のロゴを採用広報に出してよい?
A. 許諾が安全。
- 商標・パブリシティの観点から、第三者ロゴは原則許諾。
- 事実関係の紹介でも、ロゴ画像の使用は慎重に(文字表記で代替が無難)。
Q9. 合同説明会で撮った来場者が写る写真は?
A. 肖像権配慮が必要。
- 不特定多数が映る場合は顔ぼかしや撮影禁止エリア設定。
- 被写体が特定できる写真は同意を得るか、人物が主題にならない構図を徹底。
Q10. 生成AI画像は使ってOK?
A. ルール整備が前提。
- 著名人・他社ロゴに似せた生成はパブリシティ・商標のリスク。
- 学習元/出典の不明確性やフェイク懸念を踏まえ、“AI利用明記”や承認フローを設けると安心。
そのまま使える|同意書(モデルリリース)ひな形テキスト
自社実態に合わせて編集してください。Googleフォーム化も◎
- 被写体:氏名/所属(学生は学年)
- 目的:採用広報(自社サイト、SNS、求人媒体、パンフ、広告配信含む)
- 範囲:国内外/日本語・英語等での公開を許諾
- 期間:掲載開始日から○年/無期限(※退職後の取扱い:継続可・不可)
- 二次利用:切り抜き・トリミング・色補正等の軽微な加工を許諾(※人格権非行使の同意条項)
- 広告出稿:SNS/検索広告での配信を許諾
- 撤回:本人からの停止申出があった場合は合理的期間内に差替え
- 報酬:無償/謝礼(金額)
- 未成年:法定代理人の同意署名欄
- 日付・署名:本人(手書き/電子署名)
※「著作権の帰属(撮影者)」「データ保管・削除方針」「退職時の扱い」も規程で補強すると万全。
公開前チェックリスト(保存版)
- 本人同意(媒体・期間・広告利用・退職後)を取得した
- 顔/名札/客先/機密資料/PC画面に配慮(必要ならぼかし)
- ストック素材・テンプレのライセンス条件を記録した
- ロゴ・施設・作品の権利処理(又は文字表記代替)を確認
- 写真の原データ・出典・同意書をフォルダで証跡管理
- 採用SNS運用ポリシーと整合している
雇用書式に入れる“ひとこと条項”例
- (広報協力):「会社は採用広報目的で社員の肖像等を利用することがある。利用にあたっては本人の同意を得る。」
- (著作権の帰属):「従業員が業務として作成した写真・制作物の著作権の帰属は会社に帰属(または会社に非独占的利用許諾)する。」
- (SNS・情報発信):前記事のSNSポリシー条項と連動。
まとめ
- 採用広報の写真・画像は、著作権(作品)×肖像権(人物)×商標(ロゴ)の三点セットで管理。
- 迷ったら“同意の範囲を明確化→証跡を残す→公開前チェック”が鉄則。
- 同意書・運用ルール・証跡管理まで整えると、日々の広報が“安心して速く回る”ようになります。
次回予告
👉 「採用ページの“写真・画像ガイドライン”を1枚にまとめる(社内配布版テンプレ)」
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